沖田奈央
Nao Okita
ガラス作家。茨城県出身。武蔵野美術大学ガラス専攻を卒業後、2012年より東京を拠点に作家活動中。窯でガラスを焼き溶かす「キルンワーク」の技法を使用し、凛とした素材感の中にも、やわらかな情緒ある佇まいを目指して制作している。
HP: https://www.naookita.com
Instagram:@naoooookita
vol.3 心に浮かんだ、いつかを
どのような幼少期を過ごしましたか。
小さい頃は、絵を描くことが好きでした。いろんな絵をたくさん描いていた気がします。歌うことも好きで、気に入った曲を練習して覚えるのが趣味でした。
それと同時に、外で遊ぶのが好きな活発な子だったとも思います。女の子と遊ぶよりも、男の子達に混ざってワーワー言っていた記憶の方が多いですし、みんなと楽しいことするの大好き!といった感じでした。
ガラス作家を志したきっかけや経緯を教えてください。
美術大学を志望したことがきっかけだと思います。工芸の分野で大学を目指すことにした時、素材として魅力的に感じたのがガラスでした。何かにものすごく影響を受けたわけではないのですが、昔からガラス細工を集めるのが好きだったりしたので、そういったことも関係しているのかもしれません。
そして、もう少しガラスを触っていたいという気持ちから、卒業後も制作を続けることにしました。
ガラス素材のどのようなところに魅力を感じていますか。
透明なガラスの厚みや奥行き、光を通した輝きが魅力的です。私自身は作品にマットな質感を用いたりしますが、そういった素材感や凛とした感じもいいなと思っています。
最初の頃から思っていることはこのような感じですが、今はガラスに触る時間が多いので、愛着も大きいかもしれません。
今の作風のきっかけや経緯を教えてください。
大学時代に、積層の断面をテーマにして制作していました。重ねるガラスは、色のついた板ガラスを使っています。ガラスの断面から見える奥行きや柄は美しいな、と思っているので、今もその作風を続けていて、器や小さめの塊として表現しています。
複数色を使うことがほとんどですが、最近はシンプルな色の組み合わせにも興味があって、そういった制作もしてみようかなと考えているところです。
どのような技法でつくられていますか。
窯でガラスを焼き溶かす技法を使用していて、キルンワークと呼ばれています。知名度はまだ低いかもしれません。
キルンワークは、ガラスを準備して、窯に入れて焼成し、常温に戻ったものを取り出して加工、といった流れなのですが、私に合っている気がして好きな作り方です。加工機を使っている時などは集中力を使うのでまた別ですが、落ち着いて黙々と作業できます。
ガラスの焼成が終わって窯の蓋を開ける時が一番ドキドキします。うまく焼けている場合もあれば、失敗していることもあるので緊張です。ある意味、この技法は窯にお任せの時間があるのが特徴でしょうか。
制作において苦労したことを教えてください。
例えば、制作が安定しなくて失敗を繰り返してしまっている時とか、どうしてこうなるのかと考察してもうまくいかない場合は苦労を感じます。
結果的に、違う試みや改善方法を思いついたりして次に活かせるので、大変に感じる時こそ何かヒントを得られるものだなあと思ったりもしています。
作品を通して伝えたいこと、作る上で大切にしていることは何ですか。
自分自身が ”欲しい” と感じるかどうかは気にしています。あとは、作品に情緒的なイメージを写している場合が多いので、そういった雰囲気が届くといいな...と思いながら作っています。
今後の展望について教えてください。
作家活動を続けていくということです。ずっと続けるのは大変なことでしょうし、それができたら幸せだなと思います。
フォトグラムを見て感じたことを教えてください。
興味深かったです。初めて見た時は、何からこの陰影が写し取られているのだろうかと不思議に思いました。自分の作品を使ったフォトグラムを見た時は、ああ、わたしの作品の影だ、と納得できて、なんだかそのことが面白かったです。