あない作品 あないまみ

あないまみ

Mami Anai

ガラス作家。多摩美術大学大学院美術研究科工芸専攻ガラス領域修了。鏡、熱線反射ガラス、フロートガラスを素材として使用し、透過、反射、屈折といった特性を活かした作品を制作している。鏡やガラスは、削られていない部分は現実世界をそのままに映し、削られた部分は映るものが歪んで見えるという点に着目し、鑑賞者と、鏡に映る現実世界の境界線である素材を操作することによって、当たり前とされている概念を覆し、鑑賞者の感覚を惑わす不思議な光景を生み出すことを目的に制作に取り組んでいる。
mamimamiglass.jimdo.com
Instagram:[glass art]@anaimami5・[accessory]@anaimami1225

vol.2 不思議を生み出す

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ガラス作家を志したきっかけや経緯を教えてください。

私は幼い頃から絵を描くことが好きでした。中高生の時には、映像制作をしたり、イラストを描いたりしていたので、自然と将来は美術の方面に進むと感じていました。小学校の頃から通っていたアトリエ教室が美大受験という時期に差し掛かり、私はオープンキャンパスに足を運んでみることにしたのです。

映像関係やデザイン関係の学科を見ている時、魅力は感じたけれどしっくりきませんでした。そこでガラスが展示されている部屋にたまたま入り、ビビッとこれが自分の作りたいものだという感覚になりました。それまでガラスの分野について知らなかった私は、新しい世界に挑戦してみたいと感じたのです。映像やイラストのような平面的な作品を制作する分野以外に、立体的な分野を大学で新たに学ぶことで、卒業した後にどれが自分のやりたいことか考えたら良いのではと思いました。これが私のガラスとの出会いです。

ガラスに携わり始めてから素材の魅力を感じて、大学院を出てからもずっとガラスの作り手でいたいと思い、作家になりました。

ガラス素材のどのようなところに魅力を感じていますか。

ガラスの素材は本当に不思議だと感じます。透けて見えるけれど、反射が起こってそれを見ている自分の姿も見えます。ガラスの形や厚さによって、周りのものが歪んで見えたりプリズムができたり。不思議な表情、現実ではないような気持ちにさせてくれる素材感にとても魅力を感じます。

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今の作風のきっかけや経緯を教えてください。

電車に乗って車窓を眺めている時、よくガラスの魅力を感じます。窓であるガラスは向こう側の景色を透過しているのと同時に、つり革を掴んでいる私、私の後ろに座っている人々をも反射で映しています。自分の前にある窓だけにとどまらず、後ろにあるガラスとも反射し合い、さらに電車がすれ違って4枚のガラスが重なり様々な表情が見える時、ただ通勤通学をしているだけなのに、不思議な世界を見ているかのようで、とても面白く感じるのです。そういった興味から、日常でよく見かける建材である板ガラスや鏡を使用した作風に至りました。

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どのような技法でつくられていますか。

板ガラスを重ねる接着という技法を用いていて、これは大学で教わりました。接着の技法を初めて使った時に、ガラスの青みがかった透明な美しさと、重なっている面の反射や見え方がとても好きだなと思いました。他の技法も経験してきましたが、接着し、それを研磨してピカピカにしていく作業が面白いと感じて、続けています。

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作品を通して伝えたいこと、作る上で大切にしていることは何ですか。

日常の中に潜んでいる非日常性や、自身の概念を覆したり疑問視できるような不思議な気持ちになる作品を作りたいです。自分にとっては普通だと思っていることが、他の視点では当たり前でないと気づかせたり、少し考えさせられる作品にしていけたらと思っています。けれど、コンセプトについて考えすぎると、何かを作ることに意味を見出さなくてはならなくなり、手が止まってしまうこともあるので、純粋に表情として面白いかどうかも大切にしています。ときには意味を考えずに、ガラスのこういう表情が好きとか、作ることが楽しいとか、そういう気持ちは余裕がなくなると忘れてしまうので、忘れないように心がけています。

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今後の展望について教えてください。

ガラスの工芸作品というよりは、建築の中の空間を素敵に彩るアートを作っていきたいです。建築物の中にいくつか作品を納めさせていただいていますが、もっと空間全体を楽しめるような作品を作れたら良いなと思っています。大きな作品に憧れを抱いているので、それが目標です。それと同時に、アートが好きな人以外の人々にもガラスの作品に触れる機会を設けたいと考えて、アクセサリーのブランド 「a.m.glass」を立ち上げました。“朝起きてからずっと一緒にいられるアクセサリー”をテーマとしたこのブランドを通して、ガラス作品の魅力がさらに伝わるような活動もしていきたいと思っています。

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フォトグラムを見て感じたことを教えてください。

ガラスは透明なので、写真撮影にいつも悩ませれてきました。光の方向がミリ単位で違うと、異なった影ができるので驚きます。透明なのに、影ができることって不思議だとよく思っていました。フォトグラムを拝見して、ガラスのモノとしての魅力とは別に、そのもう一つの魅力を引き出す手法だと感じて、とても興味深いです。ガラスや透明な素材の特性が活かされていて、とても美しいと思いました。

ありがとうございました。